喜名雅・新居由佳梨~クラスコンサート
2024年10月30日(水)
丸亀市立栗熊小学校5年生(参加児童数:27名)
出演:喜名雅(テューバ)・新居由佳梨(ピアノ)
丸亀市民会館開館準備室では令和8年度の開館に向けて、アーティストが地域に滞在してワークショップやアウトリーチ、公演などを行い、地域と交流を図る事業を行っています。
今年度音楽事業では、テューバ奏者の喜名雅さんとピアニストの新居由佳梨さんを迎え、10月28日(月)~31日(木)にかけて丸亀市内の4つの小学校で、5年生を対象としたクラスコンサート、12月にはリサイタルと、リサイタルの関連企画として「深“まる”アナリーゼ」を行いました。
その中から、栗熊小学校で行われたクラスコンサートの様子をお届けします。
音楽室に入ると素敵なウェルカムボードが用意されていました!

子どもたちの大きな拍手に迎えられ、コンサートが始まります。一曲目はプログ作曲「三つの小品」より。間近で聴くプロの演奏にぐっと引き込まれます。

ご挨拶の後は、テューバ講座が始まりました。テューバは1835年にドイツで発明されました。「日本だと何時代?」という問いに、子どもたちから「江戸時代!」と元気な答えが返ってきます。
続いて、テューバの音が出る仕組みについてのお話に入りますが、実は、子どもたちは今回のアウトリーチの前に、マウスピースを使って音を出す練習をしてみたそうで、予習はバッチリ!

テューバは唇の振動をマウスピースから管に伝えて音を出します。
吹いている間に空気がどれくらい震えているかをわかりやすく見せるために、テューバのベルの上に、あずきが入ったアルミ皿をかざしてみます。
振動であずきがバラバラと跳ねる様子を、子どもたちは興味深そうに覗きこんでいました。
音が出る仕組みが分かったところで、登場したのはゴムホース!「これにマウスピースを差して吹いても音が出ます」という喜名さんに半信半疑の様子の子どもたち。

実際に吹いてみると「ビーッ」と甲高いブザーのような音が!飛び上がって驚く子もいるほど大きな音が出ました。
音が鳴っている時にどれくらいホースが振動しているか、みんなで順番に触って確かめました。“音を触る”体験に、驚きが混ざった笑い声とともに「おぉ」「すごい」と声が漏れます。
さらに秘密兵器が登場!こちらもホームセンターで手に入れたという塩ビパイプです。今度はどんな音が鳴るでしょうか?先程のホースで大きな音が出たので、耳を塞ぐ子もいる中吹いてみると……「ボー」と深みのあるまろやかな音が出ました。
ホースと違い、先に行くにつれて少しずつ太くなるように繋ぎ合わせているので、柔らかく豊かな音になるそうです。

そのまま塩ビパイプを楽器にして喜名さんのご友人でもある本間雅智さん作曲「ゴムホースのポルカ」(改め「塩ビパイプのポルカ」)を披露。
口だけで音程を変えて音楽が奏でられていることに、子どもたちが驚きながらも楽しんでいる表情が印象的でした。
続いては、テューバとピアノの音域対決!どちらの方がより低い音・高い音が出るか予想をしながら聴いていきます。
結果は……低い音はテューバの勝ち、高い音はピアノの勝ち!テューバの音域はピアノの低音部~中間くらいまで。ピアノの音域の広さが分かりますね。


次の曲はテューバのソロで、ペンデレツキ作曲「カプリッチョ」。楽譜には「できる限り高い音で」など音符以外にも指示があることを説明し、「テューバのいろいろな吹き方が登場するので注目してほしい」と喜名さん。音楽室がテューバの多彩な響きで満たされました。
ここからは新居さんにバトンタッチ。ピアノについて解説していきます。ピアノの音が出る仕組みを、実際に弦とハンマーを見せながら説明しました。

ピアノは“楽器の王様”と呼ばれています。それには様々な理由がありますが、音域の広さ、一度にいろいろな音が出せることが大きな特徴です。
そんなお話を踏まえてお届けしたのは、チャイコフスキー作曲のバレエ音楽「くるみ割り人形」より“行進曲”。オーケストラ用に書かれた作品ですが、ピアノ1台で様々な楽器のパートが鮮やかに奏でられました。
続いて、ピアノの音を作る大切なパーツ、ペダルについてのお話です。同じフレーズをペダルのありなしで聴き比べてみると、その響きの違いに子どもたちから拍手が起きるほど。ペダルを踏むと音が伸び、豊かな響きになりますが、ペダルを踏んだままで演奏を続けると、どんどん音が混ざって濁っていきます。
「ピアニストは音をよく聴きながら、きれいな音を保てるように足を踏みかえながら演奏しています。その効果がよくわかる曲を聴いてください」
とバダジェフスカ作曲「乙女の祈り」を披露しました。

ここからは再び喜名さんとともに演奏していきます。
次に披露されたのはアンジェラ・アキさんの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」。この曲は合唱の課題曲になったこともあり、タイトルは知らなくてもワンフレーズ弾いてみると「あ~」「知ってる!」と声が上がります。
「この先、いろいろな人と出会って、人間関係や将来の夢に悩むこともあると思うけど、自分の信じた道に突き進んでほしいという想いで演奏しますね」 というお話の後、喜名さん、新居さんから子どもたちへのエールのような、温もりあふれる演奏が贈られました。

小学校に入学した時には、鍵盤ハーモニカが上手く吹けずに音楽の授業が嫌いだったという喜名さん。意外な告白に子どもたちから「えっ」と声が上がります。
その後2年生の時にリコーダーの授業で少し音楽が好きになり、お兄さんの影響で3年生の時に吹奏楽部に入部、4年生の時からテューバを吹き始め、どんどん音楽が好きになっていったそう。
そうした経験から、
「みんなもなにか一つ、勉強でも、スポーツでも、ゲームでも、なんでもいいから夢中になれるものを見つけてとことんやってみてほしい。嫌いだったものでも続けることで好きになるかもしれないから、好き嫌いせずに、まずはなんでもチャレンジして、楽しい人生を送ってもらえたら」
と優しく語りかけました。
最後に演奏されたのは、R.V.ウィリアムズ作曲「テューバ協奏曲」より第一楽章。喜名さんは中学生の頃にこの作品に出合い、当時はうまく吹けずに練習を重ねたんだそう。
「みんなにもそんな風にいろいろなことを乗り越えられるようになってほしいな、という願いをこめて演奏します」 と、終始子どもたちへの温かい目線が印象的でした。

コンサート終了後は子どもたちから様々な質問が飛び出しましたので、いくつかご紹介します!
Q.テューバのような大きな楽器を吹いて、酸素不足にならないの?
喜名さん「酸素不足にはならないけど、クラクラすることはある。息が足りなくなるから、こまめにブレスをしています。」
Q. 上手に吹くコツは?
喜名さん「唇を柔らかくして吹くこと。」*実際に唇を固くした状態で吹いてくださいました。
Q. ピアノを早く弾いて、手は痛くならないの?
新居さん「今は大丈夫。でもテューバと一緒で力を抜くことが大事。力が入るとすぐ手が疲れてしまうので、リラックスして指だけ早く動かすようにしています。」
喜名さん「ほどよい緊張感が大事ですよね」