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REPORT

事業レポート

渡猛 小学校アウトリーチ|コミュニケーションが楽しくなる、即興演劇ワークショップ

2025年2月4日(火)
丸亀市立城北小学校5年生(参加児童数:38名)
講師:渡猛(俳優)

2025年2月3日(月)~7日(金)に、インプロ(即興演劇)俳優の渡猛さんをお迎えし、市内小学校5校13クラスでワークショップを行いました。
その中から、2月4日(火)に訪れた城北小学校5年生の授業の様子をお届けします。

今回の授業は、5年生2クラス合同で行われました。数年に一度の寒波の影響で、外は時折雪が舞っていましたが、体育館に集まった子どもたちは元気いっぱい!渡さんも驚くほど大きな声での挨拶から授業開始です。 「渡猛(わたりたけし)と言います。タケちゃんって呼んでもらえるとうれしいです。ちょっと呼んでみて」と渡さんが呼びかけると、子どもたちから「タケちゃーん!!」と声があがります。

ワークショップを始める前に、渡さんが普段行っている即興演劇がどんなものなのか、少しお話がありました。即興演劇には台本がありません。ではどうやってお芝居を作っていくのでしょうか?「今日朝ご飯を食べた人!何食べた?」という渡さんからの質問に、「恵方巻の残り」という答えが出ました。その答えを元に「恵方巻」というタイトルですぐお芝居を始める、といった感じで、先がどうなるかは演じている人にも、誰にも分かりません。その場その場で思ったことを表現して、お芝居が進んでいくそうです。

なんとなく即興演劇のイメージができたところで ワークショップに入っていきます。とは言え、いきなり即興劇をやるわけではありません。 まず、子どもたちに今の気持ちを聞きました。「なにをするか分からなくて不安だな」と思う人はパー、「不安な気持ちと楽しみな気持ち、どっちもあるな」と思う人はチョキ、「やる気満々!楽しみ!」と思う人はグーを出してみます。見たところチョキが多いようです。

「今みんなは、自分がどんな気持ちか考えて、それを表現したよね。それが即興演劇でも大切なこと。みんな違っていていいんです」「パーの人は無理しないで。しんどいなと思ったら見学でもいいよ。チョキの人、不安なのは自分だけじゃないよね。隣の人も不安だから、元気が出るようにちょっとだけ関わってみて。グーの人は、思い切り楽しんじゃってください!」
との渡さんからの声掛けで、「がんばらない」「ベストを尽くさない」ワークショップのスタートです!

最初は連想ゲームです。まず渡さんと先生がやってみます。前の人が言った言葉から連想して別の言葉を言っていきます。「たこ」「そら」「くも」… 続いて、子どもたちもやってみます。3~4人のグループに分かれて、「あお」というお題からスタート。2周ほどで一度ストップし、やってみた感想を聞いてみると「言葉が思い出せなくて難しかった」という声が。

そこで今度は、思いつかなかった時、困った時は「真っ白」と言ってみるというルールを追加して、グループを変えてやってみます。「真っ白」と言われたら、次の人は「真っ白」から連想して言葉を出してみる。次の人も思いつかなかったらまた「真っ白」…とみんなで「真っ白」を言い合っても構いません。「真っ白」に飽きたら、また新しくゲームを始める、という流れです。始めてみると、「真っ白!」という声とともに笑い声があちこちから上がり、先程よりもにぎやかにゲームが進行しました。

ゲームの後、渡さんが「『真っ白!』って言った人?」と聞くと、8割ほどの子どもたちが手を挙げました。
「今、たくさんの人が『真っ白!』って言えたのは、とってもいいこと。困ったときには『困った』って言っていいんです。でも言えない、ちゃんとしなきゃいけないって思う場面もあるよね」

「スポーツだと分かりやすいね。例えば、サッカーでシュートをしたら必ずゴールを決めなきゃいけないってルールだったら?」との問いかけに、「それはやばい」「できない」と子どもたち。渡さんも「やばいよね。怖いし、緊張しちゃう」と続けます。「コミュニケーションは、そんな風に思われがち。ちゃんと言葉にしなきゃ、うまくできなきゃダメって。でも、この授業が終わっても、いつでも『真っ白!』って言っていいんです。そう思うと、ちょっと楽になるよね」

次に2人組になって、1~3までの数字を1つずつ交互に繰り返し言うゲームをしました。まず渡さんと校長先生がやってみます。段々スピードが速くなり混乱してきます。「訳分からんようになった!」と校長先生。

子どもたちも挑戦してみると、意外とうまくできている様子。そこでもう1つルールを追加してみます。同じように1~3までの数字を言う中で、「2」の時は言わずに手を叩きます。 「失敗しても笑えるってことが大事。これで失敗した時に一人が「なんだよ!」って怒りだしたら、怖いじゃん?でも、このゲームで失敗してもなにも問題ないので、楽しんでやってみて。」という渡さんの言葉どおり、子どもたちは時々詰まったり、間違えたりしながらもゲームを楽しんでいるようでした。

さあ、いよいよ簡単な即興演劇にチャレンジです。2人組になって、Aさん(お誕生日の人)とBさん(プレゼントを渡す人)を決めます。BさんはAさんが喜ぶようなものを考えてプレゼントし、Aさんは全力で喜びます。渡したら、プレゼントの中身について、少し話を続けてみます。ここでも、困ったら「真っ白!」です。一人が「真っ白!」と言ったら、もう一人も両手を挙げて「真っ白!」と言い、2人で「わー」と一回転して終了してOKです。

早速、渡さんと担任の先生でやってみます。先生に、渡さんから大谷選手のバット(!)がプレゼントされました。「素振りとかしてみてよ」「すごい!めっちゃええわ、これ!」としばらくお芝居が続きました。先生のお芝居に子どもたちから、「うまかった!」と声があがります。

続いて、子どもたちもやってみます。「お芝居だからなんでもあげられるからねー」と渡さん。
重たそうなものや小さい箱のようなもの、いろいろな形状のものがプレゼントされています。そして響き渡る「真っ白!」の声!役割を交代して、もう一度やってみます。拍手したり、飛び跳ねたり、多様なリアクションが見られました。

「なにもらった?」と聞くと、「自転車」「うまい棒1年分」「アイシャドウ」「フェラーリ」と様々な答えが飛び出します。中には「お城」や「アメリカ」という声も!

最後は、渡さんが出すお題に対して、同じ人を探すゲームです。最初のお題は「血液型」。大きな声で自分の血液型を言ったり、手で「O」など形を作ったりしながら、仲間を探します。 「終了~」の掛け声で見まわしてみると…グループの数が少し多いようです。「こんなに血液型ってあったっけ?」という渡さんの言葉に、どっと笑いが起きます。

今度は、最後まで諦めずに、仲間を見つけきることを目指してやってみます。お題は「誕生月」。「〇月!〇月!」と先程にも増して大きな声が飛び交います。制限時間になるまでがんばって仲間探しをした結果は…すべての月で、それぞれひとつのかたまりを作ることに成功しました!「1月の人!」「2月の人!」と答え合わせの最中も、拍手と歓声で大盛り上がりでした。

最後に、渡さんからのメッセージです。
「みんなが毎日やっている、答えを出す勉強は、とっても大切だから頑張ってください。でも、答えが分からないけど、自分で答えを出さなきゃいけないことがあるかもしれない。そんな時は、今日みたいに勇気を持って、「はーい!」と出してみてください。自分が好きなものを「好き」って言ってみてください。もし、同じものが好きな人がその場にいなくても、へこむ必要はないです。いつか、同じものを好きな人に出会うかもしれない。だから、諦めずに声を出してみてほしいです」

渡さんからの「みんな、すごいエネルギーで、とっても嬉しかったです。ありがとうございました!」というご挨拶に、子どもたちも最初よりももっと大きな声で「ありがとうございました!!」と応えます。

渡さんに手を振りながら、体育館を後にする子どもたち!最後まで笑顔あふれるワークショップになりました。